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マーリンの言葉に、俺は深く納得した。
だって、俺らワケア民族はみんな金髪だから。
「黒髪のクー民族、茶髪のロノ民族、緑髪のカーネ民族、青髪のカナロア民族……。そして、金髪の、ワケア民族」
俺の背中に回っているマーリンの手が、グッと拳を作ったのが分かった。
「あなた達のその綺麗な髪は、太陽の光を浴びるとまるで輝いているように見える……」
「……要するに、目立ちすぎるってことか」
俺の直接的な物言いに、マーリンは沈黙を返した。
「ま!どーにかなるっしょ」
マーリンを安心させるようにおちゃらけて言うと、俺の胸に体を預けていたマーリンが顔を上げる。
「…決して楽観視してはダメよ」
「分かってる」
ニッコリと笑いながらいえば、マーリンは「もー」と言いながら俺の胸にデコを当てた。
「ほんとに分かってるのかしら」
「大丈夫だって。…お前がそんなに頑張ってくれるんだ。俺も頑張るよ」
マーリンの柔らかな髪を撫でながら優しく囁く。
「ジン。黒髪の…クー民族には特に気をつけなさい。…一番好戦的な民族よ」
「おう」
「外の世界の人は、クーを除いて、ワケア民族については何も知らないわ。ここに監禁されていること以外はね」
そうか。
外の世界では俺らについて調べる事も、口にする事すらも禁じられてるんだもんな。
それも、なにかおかしな話だけれど。
「ただ、人っていうものは自分とは違う人を警戒、軽蔑する習慣がある。…一発でワケア民族とバレる事は無くとも、なにか危害を加えられる可能性はあるわ」
「…なるほど」
「それに…。もしかしたらここから脱走したあなた達を、クー民族が指名手配するかも知れない」
そうだよな。
ここまでの機関を作って監禁していた人間が脱走をしたら、そうなるのも自然な流れなのかもしれない。
俺は無意識にマーリンの頭を撫でながら、彼女の言葉を聞いていた。
「なるべくその髪は人には見せないように気を付けるのよ」
「分かった」
頷きながら応えると、マーリンが顔を上げてやっといつもの笑顔を見せてくれた。
「よろしい」
わしゃわしゃと俺の頭を撫でながら言うマーリンに、俺もつられて笑う。
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