No.001

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流れ落ちる金色の髪が、光って見える。 「…は?」 タグの色は、レイと同じ緑色だった。 「俺らいつも2人で食ってるから」 レイの、鋭い眼光が彼女を刺す。 さっきと同じ人物とは到底思えないその態度に、俺は小さな溜め息を吐いた。 「レイ、一緒に食ってやれば?」 席を離れようとすると、レイは今度はその眼光を俺に向けてくる。 「ジン」 有無を言わさぬその態度に、俺は再び溜め息を吐きながら腰を下ろした。 「…ごめんね、悪気ねえと思うからまた誘ってやって」 笑いながら女に謝れば、女は顔を赤く染めた。 「えっいやっあの…。出来ればいつかお2人とお食事したいです!あの、すみませんでした!!」 ぱたぱたと女の足音が遠ざかっていって、俺たちは再び食事を始めた。 「…ジンてほんと、俺以外には優しいよな」 「お前は俺以外に冷たすぎる。それに俺が冷てえのは朝だけだろ?」 「ま、そうだけどさ。…俺はどうでもいい奴のために神経すり減らせてらんねえの」 呆れたように言うレイに、俺もまた呆れて溜め息を吐いた。 「あのなあ、レイ。俺はLv4なんだぞ?」 俺の言葉にレイはグッと口を噤んだ。 「じゃ…俺今日仕事入ってっから」 俯いてしまったレイを横目に、俺はお盆を持って席を立った。 返却口へと歩みを進めると、唐突にレイが立ち上がったのを気配で感じる。 「ジン!夜、部屋来いよ!」 「気が向いたらな」 この塔の名前は、クーの塔と言って上は30階まで続いているという。 地面とこの塔との間には街があり、この塔はまるでその町を守るようにして立っているみたいだ。 そんな塔の中に、俺たちワケア民族は監禁されている。 太陽の光を全身いっぱいに浴びた事もなければ、緑の草という物も踏みつけた事がない。 俺たちはこの中で生まれ、この中で死んでいく。 それがこの世の理というやつみたいだ。 生まれ落ちてから5年の月日が流れるまではこの塔の1階に。 文字の読み書きや時間の数え方。 仕事をしていく上で必要になる基礎的な事を身に付ける。 そして6年~15年は2階に。 コンピュータの操作の仕方やプログラミング、電子的な事を教わる。 そして16年~75年が、今俺のいるこのフロア、6階だ。
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