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「おい、聞いたか?」
「あぁ。この国も随分と物騒になったもんだ…」
「やっぱり、アレか…。
夜叉の仕業か…?」
「左肩から右脇腹にかけて袈裟懸け、それと、胴を逆手で真一文字に斬られていたそうだ」
「随分と…ひでぇ殺し方だな…」
「当たり前だ…。相手は、夜叉だ。血も涙もない化け者なんだよ」
「月の綺麗な夜にはオチオチ出歩きも出来やしねぇ…」
「全くだ…おぉ怖い…怖い…」
普段は風情が漂うこの町は殺伐とし、往来する人々は皆、口々に囁く。
『月夜に舞い踊る、美しき夜叉。その姿は少女の様に愛らしく、青年のように凛として。その瞳は月明かりに蒼く輝き、目にした者は、決して生きては帰れない。血も涙も容赦もなく、その妖刀の餌食となる』と。
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