最後の難関

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「誠は…気が小さくて、優しすぎて……お人よしで、いつも損ばかりするから…それを私がよく怒って…」 父に想いを馳せて、ふわりと微笑んだ母。 それは今までみたことないような優しい笑顔で… 「でも…でも、好きだったぁ…! そんな、誠が…凄く、凄く…好きだった…! ただ、誠が傍にいてくれるだけで、私は幸せだったのに…!!」 両手を胸元で握りしめ、祈るように父への気持ちを告白する母。 それは、今までずっと抑圧されていたものが、一気に爆発したようで… 私達は母の父への溢れ出た想いに圧倒される。 ボタボタと幾筋もの涙を拭うことなく、母は今まで禁じてきた父のことを語ってゆく。 「でも、私は誠を裏切ったから、私が出来ることは、誠の最後の望みを叶えてあげることしか残ってなくて… 誠が存在した証は…全部、全部、捨てたわ…骨まで。 誠を裏切った私には、誠のことが何にも残らないようにしないといけない… それが誠の望みで、私の罰だと思ったから…」 自分の掌を凝視して、まるでその手の中に捨て去ってしまったものを抱えているような母の姿。 ・
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