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「誠に、殺してくれって言われた時も、一緒に死にたかったけど、文香がいたから、どうしても…!
全部、全部、文香のせいにして…そうしないと、私…… 誠が、誠がいない世界で、生きていけなかった…!!」
泣き崩れる母の震える身体を、義父は優しく包み込む。
「結衣子…!すまない!お前をこんな風に追い込んだのは私だ。
誠のことを沈黙することで、自分の身を守ろうとしたんだ。お前が、誠のことをどれだけ愛していたのか痛感するのが怖くて…!
誠のように、お前のすべて受け止めることが出来なくて…私は…!!」
母は父の手を握り、首を何度も横に振る。
「総一さん…違うの。私が、悪いの。私に誠を看取る覚悟がなかったから…
だから、誠は、総一さんに私を託して、一人で死んでゆくことを選んだのよ。
誠のことを一番わかっていたはずなのに……最後まで、あの人は私に優しすぎたの。
どんなに辛くても、どんなに苦しんでも、私の腕の中で死んで欲しかった…!!」
長い間苦しみ続ける母の後悔は、すべてそこにある。
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