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そう、今でもはっきり覚えている。
それが、私の一番最初の記憶だったから。
今なら解る。あの粉は、父の遺灰。
あの時、母は父の遺言どおり、遺骨を海に散骨していたんだって。
どうしようもない後悔と喪失感を一人で抱えて…
「そして……『文香まで、いなくならないで!』って…!!」
「…ふ…っ……か…!」
母がフラフラと私に近づいてくる。
「あたし……その言葉をずっと覚えてて…だから、どんなにママに嫌われても、どこにも行けなくて…
その言葉があたしにとって、ママへの希望の灯だった…!」
「文香!!」
はっきりと名前を呼ばれた瞬間に、母にぎゅっと抱きしめられた。
ああ…母の腕の中に包まれたのは、いつだったか…
今ではもう、母は私より小さくなってしまった。
私はゆっくりと母の小さな背中に手を回す。
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