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「俺は、あなた達が負わせた傷によって、文香がすごく苦しんできた姿を知っています。
すでに治っていたと思っていた過呼吸も、過去のフラッシュバックが起こって再発しました。
あなた達が誠さんの死によって抱えた傷に長年苦しんだように、文香はこれからもあなた達が負わせた傷と向き合い続けなればいけません。
だから、正直、俺はあなた達が許せない…!」
将さんの瞳に怒りの感情がこもる。しかし、それがフッと緩んだ。
「でも……反対に、感謝もしているんです」
「…え?」
将さんの意外な言葉に、二人ともハッと顔を上げる。
「文香が、こんなにも純粋で芯の強い女性になったのは、皮肉にも、あなた達とともに生活したからだとも言えるからです。
孤独と闘い、傷つけられることに懸命に耐え…だからこそ、今の文香がある。
誰よりも人の傷に敏感で、優しい…そして、しなやかに強く生きている」
泣きそうな顔で微笑んで、将さんは私を見つめる。
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