17人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
毎年恒例、会社を上げてのクリスマスパーティ。
勿論俺の家族、そして梓の家族も招待されている。けれど、紹介は禁止されている。流石にオヤジも其れは体裁が悪いのだろう。
化粧の濃い派手な女性たち。それを遠目に眺めれば小さく息を吐く。広い会場、始まってから数時間。まだ梓とは会えていない。待ち合わせしてるわけでもなんでもないけれど。
「親父と話してんのかな…」
時間の取れない俺達の親父はクリスマスに俺達に会うことを義務付けている。数時間前に親父と会って話したばかりで。
「あの親父、話すの好きだからな…」
なんて小さく呟けばふうっと息を吐いて窓の外を眺める。外がこんなにも恋しいと思う日はこの一年に一度だろう。
それに、今年は己の恋人と過ごすはじめてのクリスマス。2人で過ごしたいな、なんてことを思ったときにカツカツと音を立てて近寄ってきたのは俺達の母親と梓だった。
「洋太。お父様とお話したの?」
「勿論、けれど俺の跡継ぎの話は出ませんでしたよ。」
梓も俺の言葉には頷く。それを見た母親二人はため息を吐く。それも毎年恒例の景色。毎年変わらないそれにも呆れてしまった。
「お父様もそろそろ跡継ぎを決めていただかないと私の安泰も決まらないわよね。ねぇ?洋太?」
「あら、何言ってらっしゃるの?うちの子を跡継ぎに選ぶに決まっているでしょう?」
「おたくの子が跡継ぎなんかになったら会社はどうなるのでしょうね?」
「なんですって!?」
あぁ始まった。毎年恒例の喧嘩。梓はこの日のこの時間が一番嫌いなのを俺は知っている。俺達は黙ってそれを見ていなければならないのだから。
口答えは許されない、そんな空間。そして己の親の言葉には逆らってはいけないのだ。
俺も梓もそんなの、望んじゃいないのに。
.
最初のコメントを投稿しよう!