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梓の手が震えてる。それを握り返したら梓が不安げに俺を見上げていた。
「梓、逃げちゃおっか。」
「でも、洋太…、」
「大丈夫、俺が守るから…。」
この間親父が新築した家は安藤家とウチとをつなぐ家だった。家が一緒の敷地になったのはいいが母親の処理が一層面倒臭くなってストレスしかたまっていなかった。けれど、こんな時に感謝する時がくるとは思わなかった。
「…どうする?」
「あの、でもね、この格好で逃げたらすぐバレちゃうよね、」
「…、」
梓の手を引いて衣装室へ。親父が服の会社をしているだけある。色取りどりのドレスが揃っている。梓の服を脱がしてドレスを一着拝借する。勿論梓のスーツは回収。
「ちょ、洋太!」
「此処を脱出する間我慢して」
なんて伊達めがねを掛けて梓の手を引く。梓の身長では足元が隠れて丁度見えないのでヒールにする必要はない。窓際まで来れば人目を確認して窓を少し開けた。
「梓、」
「うん…洋太。」
俺の広げた手の中に収まる梓を抱き上げ窓から外へでた。門番を素通りし暫く歩いてから2人で小さく笑った。
そしてその格好を利用して今度こそ二人だけのクリスマスを過ごした。
勿論、内容は秘密。
あんな梓の姿、誰が教えてやるかっていうの。
fin
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