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ヒュウウ…
虚しく乾いた風が、僕の耳を横切る
少し、肌寒いな…
「お前さえ居なければ俺はこんなにも不幸にならなかった!お前が俺の妻を誑かしたりするから…!」
不幸…?
目の前のナイフを持った男の言葉を適当に聞き流していた僕は、ピクッとしてから肩を震わせた
「フッ…!そうさ。そうやって目の前の恐怖に震えるがいい!」
なんの勘違いをしたのか、僕の震えを男は恐怖と思ったらしく、喜んでいる
違う。
もうナイフやら銃を向けられても僕は怖くなど無い
怒りだ。
珍しく沸き上がる感情に驚きながらも、冷静になれず、僕は肩を震わせている
何故、そんなにも良い幸せな人生を不幸って言えるんだよっ…!?
「死ねぇえっー!」
ズドっという鈍い感触
生温かい血の流れ
遠退いていく意識
今日、僕の543回目の人生が終わった
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