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上空5000mこの中層界に、一つの大きな船が浮かんでいた。
辺りは薄暗く豪雨と雷がひしめきあっていた。
そうここは積乱雲の中である。
しかもとびきりでかい。
船頭に雲挺藤と書かれたこの、全長600m、幅200m、全高300mほどの巨大な船はこの雷雨に耐えていた。
『挺長!このまま停泊していては、沈んでしまいます!出挺命令を!』
挺長と呼ばれた中年位の風貌の人は凄く思い詰めた面影で窓の外をみていた。
『偵察部隊は未だに帰らんか?』
ふと窓の外から部下に視線を反らし、そう問いかけた。
『はい.......恐らく、もう........』
顔が曇り、少しうつむき答える。
『分かった.......よし!出挺命令を出す!』
少し、哀しみの表情を浮かべるが、はっきりと部下に命令を下す。
出挺!出挺!と部下達が叫びながら出挺準備を進めて行く。
『では、私は偵察部隊員の御家族に報告にいって参ります.......』
と言い挺長が頷いたのを確認し、一礼し指令室から出ていった。
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