はじまり

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おっさんは 心配そうに俺を覗きこむと スッとオレンジ色のハンカチを 俺に手渡した。 俺は何も言わず受け取り 涙を拭いた 「ねぇ、君、名前は?」 『………誇太郎(こたろう)…』 俺の名前は 日向 誇太郎(ひなた こたろう) 中学3年生で15才だ。 「漢字はどう書くんだい?」 『漢字? 漢字なんか聞いてどうすんだよ… 誇りの“誇”に 太郎は普通に“太郎”だ!』 「誇りか…いい漢字だねぇ」 『…おっさん…仕事帰りか?』 「ううん?まだ仕事中だよ」 『仕事しろよ!!!!! おっさんバカか!』 仕事ほったらかして 中坊に構ってんじゃねぇよ!!!! 「泣いているのに ほっとけないじゃないか。 で?どこが痛いんだい?」 優しいっつうか… お人好しっつーか… 人がいいっつーか… 『どこも痛くねぇよ! じゃあな!おっさん!!!!』 俺は おっさんの前から 逃げるように立ち去った。 ―…なぁ、おっさん。 もしも、あの日 俺がさ、あの場所で うずくまってなかったら あの場所で フラれてなかったら 俺はさ、おっさんと 出会えてなかったのかもな! これが、俺とおっさんとの はじまりだったんだ!
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