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「今は考えてない。三十半ばになるとしたくなるのかなぁ。……この仕事も続けたいし」
「お婿さんもらうことになるのかな?」
「両親の希望はそうしてもらいたいみたい。でも、強くは言ってこない。……最低限、宇津官にいて欲しいみたい」
「俺は、構浜で仕事があるし、親の老後のこともあるから、宇津官にはいけないよ」
「わかってるわよ。泰輔をあてにはしてないから」
「誰か、目星がついている相手はいるの?」
「いないから、悩んでいるんじゃない」
「宇津官で探せば」
「両親が、もう親戚とか、知り合いに声かけてて、一人いい人がいるみたいで、来月初めに会うことになった」
「そんなに話、進んでいるんだ」
「その人と会って見て、気があいそうな人だったら、どうしようかな?」
「俺に、聞かれても困る。……自分で決めるしかないと思う」
「そうだけど。……構浜にまだいたいな」
「俺、何も言えない」
「独り言だから、気にしないで」
美紗子は、泰輔の方にカラダを向け、抱きついてきた。
泰介も、抱き返しながら、美紗子の唇に自分の唇を押し付けた。
夜十時を過ぎて、ホテルの大きな窓から見えるラドンアークタワーの室内灯は、まだ半分ほど付いていた。
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