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結婚して二年が過ぎ、子供もなかなか出来なかったこともあって、二人の間の会話が少なくなり、気持ちも次第に離れ、ギクシャクするようになっていた。
郁子の不妊の原因を病院で検査してもらうと、過去の堕胎が影響しているかもしれないと言われ、博則にその時初めて学生時代に一度妊娠し、中絶したことを打ち明けた。
博則はそのことについて、郁子を責めることはなく、むしろ、いたわりの言葉を優しくかけてくれたのだった。
だが、彼の両親や、叔父の社長がそのことを知ると、二人のことに口を出すようになり、博則に、郁子と別れるようにと言ってきた。
博則は、医者から不妊治療をすれば、まだ子供ができる可能性はあるからと、両親たちを説得したものの、結局、押し切られてしまって、郁子に離婚の話を切り出しはじめた。
郁子は、彼のことはまだ好きだったし、生活も安定し、将来的にもある程度の見通しがあることに未練もあったが、この際、雑誌編集者になるという自分の夢を追ってみようと思い切って離婚を決断したのだった。
そして、離婚後に、出版社にいた頃のつてを辿って、構浜タウンサイトに勤めるようになっていた。
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