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しばらくするとアシスタントの木本優輝が、泰輔の携帯電話を持ち、駆け寄って来た。
「構浜タウンサイトの長谷部さんからで来週木曜日の打ち合わせの都合を聞きたいから折り返し連絡くださいということです」
「ありがとう。……撮影始められそうか?」
「まだ、なんか揉めてるようです」
「もう少し掛かるかな。優輝、スタジオにいて始められそうになったら呼んでくれ」
「わかりました」
構浜タウンサイトは、祖奈川県中心部に毎月八十万部程発行しているタウン情報誌で、主に女性を対象にした地域案内、イベント、ファッション、美容、エステ、ダイエット、グルメ、観光スポット、子育て、教育、賃貸物件、求人等の記事や情報、広告を掲載している。
泰輔が、構浜タウンサイトの長谷部に連絡すると、来月号のグルメ紹介取材の同行撮影と再来月号の撮影分の打ち合わせの都合を聞いてきたので、来週木曜日午前十時に伺いますと返事し電話を切った。
タウンサイトとは、松崎のところにいた時から取引があり、五年前からは泰輔が主に担当していて、独立した時に、松崎から譲り受けていたのだった。
ケイタイで話をした長谷部麻友は、二十七歳、構浜タウンサイトに入って三年目、雑誌編集の仕事は、まだ、チーフの瀬戸郁子の下で教わりながら要領を覚えている段階だった。
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