Naturally

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由実は、気難しくなった泰輔を、最初のうちはやさしく労わるように接していたものの、その状態が二ヶ月ほど続くと今度は彼女の方が気疲れしてしまい、泰輔と接触することを拒むようになっていた。 泰輔の方も、由実に優しくできない自分をわかってはいても、仕事のことで憂鬱になり彼女のことまで気が回らなくなり、そのまま連絡が途絶えぎみになって、結局別れることになってしまった。 独立してから一年半ほど過ぎた頃、仕事もそこそこうまくまわるようになり、泰輔の気持ちにもゆとりができていた。 別れた由実にまた付き合って欲しいと連絡してみたけれど、由実の方はもう決まった彼がいるから二度と連絡しないでくれと強く拒絶されてしまった。その後も、由実のことを幾度となく思い出して、メールを送ってみようと、文を打ち始めては途中で止め、未練がましい自分を自身で叱りつけて、あきらめをつけていた。 しばらくしてやっと、元の彼女の面影がちらつかないようになり、新しい出会いを探し始めた。 仕事関係の出版社や広告代理店、印刷会社や一般会社の担当者、グラフィックデザイナー、スタイリスト、メイク、技術スタッフ、取材先などで魅力的な女性と会う機会も多くあった。 時々一緒に仕事をしていた二十七歳のグラフィックデザイナーの杉森美紗子と、一年前から、仲よくなって、月に二、三度食事をしに行ったり、一夜をともにする間柄になっていた。
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