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それでも、言葉は
──伝えたい言葉に、
想いは増すばかりで──。
寒さも厳しくなったクリスマス間近の賑やかな商店街を私は歩いていた。
終業式帰りのお昼時であったが私にはお昼ご飯よりも優先することがあった。
(今日こそは…!)
意気込む反面、足はすくみ、なかなか歩みを進めることが出来ない。
目の前には彼のいるだろう本屋があるのに。
もどかしくて、歯痒い。
「……店の前で何してんの?」
「ぎゃああああっ」
真後ろから高めの男性の声が聞こえて、私はきゃああと可愛く叫ぶことも出来ず、女としてどうかと思う声を上げた。
びっくりし過ぎて体が前のめりになり、ぐらりと体が揺れた。
(──あッ、やばッ、転ぶ…)
腕の辺りをしっかり掴まれ、体が男の両腕で支えられた。
「………大丈夫か?」
ぱっと振り替えれば柔らかな金髪を風に靡かせた彼の姿。
茶色い澄んだ瞳に自分が映った──すっごい間抜け面してるっ!!
「だ、大丈夫よッ!!」
ばっと手を振り払い、彼──月帝 咲也と距離を取った。
「……?」
キッと睨む私を彼は不思議そうに見つめて、ただ一言。
「邪魔」
と言って、横を通り過ぎて行った。
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