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(え?え?)
(どういう意味?)
(安くない?なにそれ)
「代わりに…これ、やるよ」
彼は徐に左耳に手をやるとそれを差し出してきた。
慌てて受けとるために右手を出す。
左手が繋いだままだから、向かい合うような体勢になった。
ひんやりとしたそれが手に乗った。
「…ピアス…?」
それは彼がいつもつけている紅い宝石の付いたピアスだった。
「つけてやるよ」
彼はそう言って放心状態の私の手からピアスをとり、折角繋いでいた手を離した。
それを残念に思いながら、彼の行動を止めに入ることに専念する。
「私、穴が…!」
私は真面目な学生なのでピアスの穴なんて空いていない。
「──ほら、出来た」
「え!?」
その驚いた顔に彼がフッと意地悪に笑った。
「マグピだからな」
「つ、月帝くん!! 騙し──」
「折角だし、名前で呼んで?」
(名前って──)
「咲也……?」
「上出来」
「へっ!? はっ!! 私、今…」
それに彼は満面の笑みを浮かべて歯を見せて、子供っぽく笑った。
まるで悪戯が成功した子供みたいだ。
「ズルいよ、私の名前は……」
(ずっと呼んでないくせに……)
落ち込む私を見て、月帝くんはすっと近づいてきて、耳元に唇を寄せた。
「──────」
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