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「わぁ…っ」
思わず小さな歓声を上げると彼は小さく笑った。
ツリーを見ていてその笑顔を見逃したのに気づいたのは僅か数分後だった。
(何やってんだ! 私!! 見逃すなんて、ばかばかばか──)
「そう言えばさ、お前…欲しいものとかないのか?」
「ほ、欲しいもの…?」
(欲しいものって…)
思わず相手をガン見してしまった。
けど、それは無理だろうと少し苦笑を浮かべる。
(彼は──アイドル…なんだから…)
「月帝くんは…何かないの?」
「俺?俺はクリスマスケーキが食べれればいい…。欲しいものとかねぇし」
(月帝くんって…かなり、…子供だよね…見た目よりも)
「それより、お前だよ。なんかねぇの?」
「わ、私は…」
ここで言わなくちゃ。
ずっと、言えない。
何度も言えなかったけど、今なら──。
きゅっと繋いでいない方の手を握り締める。
「──私は、つ、月帝くんがほし、い…」
(──言えたっ)
(よかった…)
(ずっと言えないままより、ずっといい…)
「………俺?」
「そ、そう!! 悪い!?」
(なんで、素直になれないの……もっと可愛く言えたらいいのに……)
「……悪いけど」
「いいっ!わかってたからっ」
わかっていたこと、だもんね──。
あぁ、わかってたことなのに。
────泣きそう。
必死に押さえようとすればするほど溢れ落ちそうになる。
「悪いけど、俺はンなに安くねぇからな」
フッと彼が笑ったような気がするがぼやけてよく見えない。
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