『序章』

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朝靄の中、霧生秀彰(きりゅうひであき)は朝の散歩を堪能していた。 夏場だというのに、朝方は涼しくて、時折吹く風が寝起きの体には心地好かった。 耳にまでかかる髪の毛を風が揺らす。そんな風とともに動物の鳴き声が聞こえた。 晴々とした空から、整備の行き届いていない森の中に視線を移す。 視線の先では、小動物がもの珍しそうに秀彰を見ていた。 近寄ったら逃げられるかなと、秀彰は思ったが、間近で見てみたい衝動に駆られ、道なき道を突き進む。 草花が複雑に絡まりあい、前に進むだけでも一苦労だ。 忍(しのぶ)の話では毒を持った蛇もいるとのことだったが、それ以上に小動物を間近で見たいという衝動が勝り、歩くことをやめない。
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