『序章』

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どれくらい待っただろうか。朝の涼しさもどこかへ、日本の夏独特の蒸し暑さが襲い掛かってくる。 海のなかだから大丈夫なわけではないのだ。このままだと見つかる前に脱水症状を引き起こしかねない。 だからと言ってここの水を飲んだらダメだ。 海水を飲めば、さらに水が欲しくなる。 テレビでの情報だから、間違いないだろう。そもそも嘘を流すメリットがない。 ため息をつく。 そして、何度も繰り返した行為を再度始める。 「誰かいないかーー!!」 これも何度もした行為。耳を澄まして返答がないか、待つ。 「おい、今の秀彰の声じゃねぇか?」 聞こえた。あれは巧の声だ。聞き慣れた声に今度は安堵の息を吐く。 「そうだ! 俺だ! 穴の下にいる!」 すぐに返事がきた。
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