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―――あぁ、むしゃくしゃする。
「よォ、黒豹さん?今日は俺たちを相手してくんねぇ?ここらじゃ無敵なあんたに、俺んとこの下っ端がやられちまってよー……」
だりぃ…
俺の胸ぐらを掴み、血走った目を向けてくる名前も知らない奴。
「きっちり落とし前、つけさせてもらわねーとなァ!?」
飛び散ってくる唾に眉を寄せる。
「んだテメェ、その面は。やる気あんのか、あ"ぁ!?」
飛んできた拳を片手で軽々と受け止めて、俺は低く唸るように呟いた。
「歯ァ食いしばれ、ゲス野郎」
『スウィート・スイーツ』
「ひゃー、派手にやったなぁリン」
周りを見渡せば、十数人程度の男が地面に突っ伏している。
もうじき午後9時を回ろうとする今、薄暗闇に佇む二つの影と周りの倒れた男どものシルエットは何とも言いがたいだろう。
「その呼び方はすんなっつってんだろ」
俺は壁にもたれてこちらを愉快そうに見てくる男を睨んだ。
「へーへー。分かりましたよ総長」
「チッ」
こいつのこの余裕そうな態度は毎度ながら腹がたつ。
しかしそうは言っても、こいつは俺の右肩なのだ。
手放そうにもできない。
「つーか、何でテメェは参戦しなかったんだよ。無駄に時間食っちまっただろうが」
「えー、だってさ。この屑どもがリン目当てなんだから、俺が介入するわけにも行かないっしょ?男の戦いには手を出すべからず、ってね」
「どうだか。そんでリンって呼ぶな」
こいつは単に自分の手が汚れるのが嫌なだけじゃねぇのか。
そう疑問を口にすると、さっすが倫太郎!と手を叩いた。
うぜぇ。
「いやー、俺ってば無駄な争いは避けたいわけよ」
「俺だって避けてぇっつの」
「まーまーそう言わずに。ほら、さっさと行こうや」
促されるまま、渋々歩き始める。
俺らはこの先にある廃墟に行こうとしていた。
しかし冒頭のように、俺に恨みを持つ輩に喧嘩吹っ掛けられて足止めを食らったというわけだ。
話の内容で察せたかと思うが、俺はこれでも族の総長をしている。
現在高校2年生にして、ここら一帯を制すほどの勢力だ。
ちなみに黒豹というのは不本意だが俺の通り名である。
そんで俺の隣を歩くこいつ、修吾は副総長であり俺のダチだ。
結構な愉快犯だがそれなりに友達思いだと思う。
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