319人が本棚に入れています
本棚に追加
向かっている廃墟は、いわゆる俺らチームのアジト。
別に特別な集会があるわけでもないが、ちょくちょく顔を出しておかねぇと威厳ってもんが保てない。
曲がり角に差し掛かったとき、俺は何かに躓いた。
「!?」
傾く体を足で踏ん張って止め、躓いた原因に目をやる。
そこには……何て言うか、薄汚い餓鬼が座っていた。
「え、ちょ……君なんなの?」
修吾がその餓鬼に近付いて行き、見下ろす。
俺もその後に続いて修吾の隣に立った。
餓鬼は……恐らく女だろう。胸辺りまで無造作に伸ばされた髪でしか判断ができない。
前髪で顔が隠れている上に俯いているから、何だか不気味だ。
何だこいつ…
こんな小さい奴がこんな所にいるのはおかしい。
「おいお前」
俺はそいつに話しかけたが、そいつはぴくりとも反応しない。
――――生きてんのか…?
「お前みてぇな餓鬼がこんな治安の悪い所にいるとろくな目に会わねぇぞ。さっさと家帰れ」
これは俺なりの親切心って奴だ。
腐っても人の心は持ってるからな。
するとその餓鬼は勢いよく顔を上げた。
俺も修吾もそいつが動くなんて予想もしていなくて、思わず仰け反る。
依然、餓鬼の目は前髪に隠れたまま。
「……ご飯」
「「は?」」
何を言い出すかと思えば、ご飯?
小さく今にも消え入りそうだったが、透き通った声でしっかりと聞き取れた。
「……あたしの、ご飯」
餓鬼はそう呟くと、スッと手を上げてある一点を指差した。
「……?」
指先は俺の足元。
俺と修吾は顔を見合わせ、餓鬼が差した方向を見た。
「―――あ…」
何か踏んでいるという感触はあったが、気にも留めていなかった。
何かビニール袋のようなものを踏んづけている。
何だこれ?
最初のコメントを投稿しよう!