星降る聖夜

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 清き灯 街に満ちて  彩るtender sight  Holy holy night  大きな邸のベランダで独り、少女は澄んだ声で歌を口ずさんでいた。白金色の長い髪は冷たい風に揺られ、吐く息は冬の空気に白く染まる。 十二月<ドゥーゼンブリ>二十四日。  一段と星が綺麗な今夜。双子大星<ヘミニス>と呼ばれる二つの輝星を中心に降り注ぐ流星群が、夜空に壮大なスペクタクルを展開していた。 もしもそれら一つ一つが本当に願いを叶えてくれるなら、ほとんどの願いは叶ってしまうのではないかというほど、流星は次々に流れ落ちる。 「ポルカ、また此処にいたのか。風邪引くぜ?」  自身に掛けられた声に、少女は身を翻す。 そこに、彼女と瓜二つと言っていいほどよく似た顔立ちをした、少年の姿があった。やはり白金色をした髪は、男子にしてはやや長く、紐で一つに束ねられている。 少女は少年に笑いかけながら、やんわりとした口調で応じる。 「ああ、ごめんなさい、カストル。でも星が綺麗だから、もう少しいさせて頂戴」 そして再び、夜空の祭典へと目を遣るのだった。 少女の名はポルカ。 少年の名はカストル。 共にこの日十五歳になったばかりの、双子の姉弟。 性別の違いによって背丈や体格には少しずつ差異が生じてきたが、深いブルーグリーンの瞳をもつ目元は、いくつになってもそっくりだった。  カストルもポルカの隣へとやって来て、手摺りに寄り掛かり空を見上げる。 「双子大星か。俺達の名前ってあの星から由来してるんだっけ」 「そうですわ。母様が付けて下さったのよ」
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