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「母様、こうして願い続けても、やはり帰っては来ないのですわね……」
母がいなくなって以来、ポルカにはベランダで歌を口ずさむ癖がついていた。歌うことが好きだったから、歌っている間は淋しさも紛らわすことが出来た。
そして、歌に願いを込めて星に祈った。母の帰りという、願いを。
十五回目の誕生日を迎えた彼らを、流星群という空の一大ショーも祝福してくれた、今日という特別な日。
奇跡を信じ、沢山の流星に願いをかけた。
しかし、それは届かぬまま、日付は変わろうとしている……。
「星に願いなんかかけたって、叶わねぇものは叶わねぇ。……叶えたけりゃ、自分で動かねぇとな」
肩をすくめる姉を叱咤する、片割れの弟。
母が消息を絶ってから、彼にとってこの邸は檻同然だった。
彼が欲したもの――それは、自由。
少年と少女は、この邸から外に出ることを許されなかったから。
勉学や護身程度の武術を家庭教師に教わり、食べるものはメイドに作って貰っている。決して困窮しているわけではない。
しかし何故、邸の外に出ることだけは固く禁じられているのか?
そして何故、母は連れ出されたまま戻らないのか?
自我の芽生えとともに置かれた境遇に疑問を感じ始めるのは、時間の問題だった。
特にカストルは度々脱走を試みて、門番に大目玉を喰らう事も。
家庭教師や召使達も、肝心なことは何も教えてくれない。
だから、十五歳になるこの年に、二人は決意をしていた。
自分達の意志で動き出す、決意を。
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