星降る聖夜

4/5
前へ
/17ページ
次へ
「母様、こうして願い続けても、やはり帰っては来ないのですわね……」  母がいなくなって以来、ポルカにはベランダで歌を口ずさむ癖がついていた。歌うことが好きだったから、歌っている間は淋しさも紛らわすことが出来た。 そして、歌に願いを込めて星に祈った。母の帰りという、願いを。 十五回目の誕生日を迎えた彼らを、流星群という空の一大ショーも祝福してくれた、今日という特別な日。 奇跡を信じ、沢山の流星に願いをかけた。 しかし、それは届かぬまま、日付は変わろうとしている……。 「星に願いなんかかけたって、叶わねぇものは叶わねぇ。……叶えたけりゃ、自分で動かねぇとな」  肩をすくめる姉を叱咤する、片割れの弟。 母が消息を絶ってから、彼にとってこの邸は檻同然だった。 彼が欲したもの――それは、自由。 少年と少女は、この邸から外に出ることを許されなかったから。  勉学や護身程度の武術を家庭教師に教わり、食べるものはメイドに作って貰っている。決して困窮しているわけではない。 しかし何故、邸の外に出ることだけは固く禁じられているのか? そして何故、母は連れ出されたまま戻らないのか? 自我の芽生えとともに置かれた境遇に疑問を感じ始めるのは、時間の問題だった。 特にカストルは度々脱走を試みて、門番に大目玉を喰らう事も。 家庭教師や召使達も、肝心なことは何も教えてくれない。 だから、十五歳になるこの年に、二人は決意をしていた。 自分達の意志で動き出す、決意を。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加