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ここは【アークエンス】の大陸西部に位置する【クロウエッジ皇国】の草原。
魔法が盛んな皇国領には、魔法の源である魔気が豊富だ。よって、皇国領土を占領されるようなことはまずないため他国より優勢に立つことが可能だった。
満天な快晴の下、風にのって舞う草が所々目に付くような広大な草原である。
その草原には馬車が通ってできた一本道があり、唯一の砂が緑一面の空間に線を引いているようだった。
風の音しかしない静寂の中、少しずつ足音が近づいてきた…。
「…本当になにもないんだな、この国は」
そう誰に話しかけるわけでもなく呟くと、欠伸をひとつした。
クロウエッジ皇国は魔法ばかりに力を入れて機械文明に疎いって聞いてたが…これほどまでとはな…。
わかっていたはずなんだが…少しは珍しいものがあるだろうと来てみれば、ただの草原にただの動物やただの食べ物。
これじゃ【ミーティア共和国】と大差ないじゃないか…。いや、魔法がある点ではこの国のほうが面白いのかもしれない。
もっとも、その魔法をまだ一度も目にしていないが…。
重い足を前へ運びながら、国境付近の集落へと向かう。母国と変わらない国なら、母国のほうが落ち着けるからな。
戦争で優勢だとはいえ、突然攻めてこられたら俺のほうまで被害を受けるかもしれないし…。安全のためにも早めに出て行ったほうがいいな…。
少しため息をこぼすと腰に下げたホルダーにふと手をのばしてみる。
中には最低限の貨幣と少し錆びた短剣があった。物騒な世の中だ、武器の一つ携帯していないほうがおかしい。
適当につまみ上げた硬貨を指で弾きながら長い長い一本道を歩いていく…。
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