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「みたいですね。では、私たちも早めに準備してしまいましょうか」
「合点承知のスケベさん!」
「こういう場所でそういう発言は謹んで欲しいですね……」
「おぜうさまは随分と抽象的ですねぇ」
「黙りなさい」
「ほいほ~い」
そんな下らないやりとりを交わしながら。
俺と憐華は目的地である――養護施設へと足を踏み入れたのだった。
*****
養護施設「ひまわり」
いわゆる孤児院というやつで、そこでは親の居ない子供、家庭環境上、家にいる事が不可能な子供、様々な都合を抱えた子供たちが住んでいる。
子供たちにとっての「帰る居場所」でもあり……同時に、俺と憐華の「帰る居場所」だった家だ。
単刀直入に話すと。
俺と憐華は、この「ひまわり」の出身だ。
紆余曲折あって、今は学校の使われなくなった旧宿舎に住んでいるけれど、ここの出身であった事には変わりない。
――無論、親に捨てられた事実も、変わらない。
まあ、だけど?
別にいまさら親を恨むなんてめんどいだけだし、きっと何かしらの事情があったんだと思う。
……あ、やっぱ訂正。一言くらいは謝って欲しいわ。
俺の事はどうでもいいけど、憐華を悲しませた事は万死に値するからな。
全く、クリスマスだからって寛容になってちゃダメだね!
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