本編

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「和人、まだ準備は終わりませんか?」 ボロっちい壁一枚を挟んだ向こう側の更衣室から声が聞こえる。 「急かすね姉御!」 「誰が姉御ですか」 「かっかなさるな、おぜうさま」 「クリスマスらしく、真っ赤に染まってみますか?」 「遠慮しときます」 ぼやぼやしてたら憐華に真っ赤に染められちまうな。 「ぱぱっと着替えて……っと」 改めて言うが、今日はクリスマス。幸せが集う素敵な一日。 慰問、という訳では無いのだが、俺たちは今までお世話になった「ひまわり」で、クリスマスパーティーを開く事を決めたのだ。 俺はトナカイに。 憐華はサンタに。 お互いにコスプレをして、クリスマスらしく、子供たちにプレゼントを配ろうと考えている。 ……もしかしたら、この行為はただの自己満足かもしれない。 でも。 そんなの関係ない。 重要なのは、気持ちなんだ。 俺たちの小さな行動で。 少しでも幸せを届けられたなら。 少しでも現実に希望を持たせられたなら。 少しでも未来に夢を馳せられたなら。 そんな、儚い願いを込めて、聖なる夜に俺たちはサンタクロースになる。
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