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「何がクリスマスだっ!ばっきゃろう!」
中年の松田がカップ酒片手に吠えていた。
喜一は肩を彼に貸してフラフラと歩く。
呑んだくれの亭主を連れて帰ってくれと
松田の女房に頼まれたのだ。
女性の頼み事を快く引き受けるのは、男性の魅力に成りうるが
この場合は何か違うとぼんやり思いつつ
喜一は松田を引きずる。
「見ろよ。きいっつぁん。星が…綺麗だぜ?」
赤い顔で、松田は天を指して言った。
「…上から夜景を見下ろすよりよ…
下から星を見上げる方が綺麗だとは思わねぇか?
きいっつぁんよ。」
なるほど。
…そういう考えもあったのか。
天に流れる星々は、人工では決してつくれぬ輝きを地上に降り注いでいる。
喜一は、聖なる夜に散りばめられた星々を見上げ、想いを……
「オボロロロロ…ウェエエ…」
空に美しい天の川。
地上に松田の汚いゲロの川が出来た。
もう上しか見れない。
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