雨の日の花束

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先日、その日は大雨だった。 この町ではごくありふれたことではあるが、その日の雨は違った。 降り止まない雨はいつしか、人々の視界を塞ぎ、コンクリートの道路はまるで氷を張ったように滑って事故の危険性を爆発的に増やしてしまう。 そのせいで…いや、あれはきっと神のせいだ。 いくつもの偶然が重なり、もはやあの事故は必然とも呼べる経緯であった。 あの日、立花 京助は突然母が倒れたという報せを聞き、あの大雨の中車を走らせた。 すると、いつもは混んでいないはずの一直線の道路が、雨の影響か混んでおり、まるで京助を誘導するかのように、あえなく少しばかり時間がかかってしまう回り道の方へ走りだした。 それが神の悪戯、京助は川を大きく跨ぐ橋の中途、対向車のトラックが突然押し寄せ、京助はトラックから逃れるためにハンドルを思いっきり回す。 気づけば歩道や鉄の手すりを突き抜け、急速に流れる川へ転落…京助は死んだ。 トラックの運転手は、橋の上で猫が横切ったのでとっさにそれを避けようとしたらしく、橋に猫なんて、と初めは思った。 しかし、いたのだ。 猫は確かにいた。橋の中途、ちょうど京助が転落した場所の近くに、あまりに無惨な猫の死体が横たわっていた。 トラックは猫を避けたらしいが、そうした結果、京助は死に、さらに猫も、京助の後を追うように死んだ。 これが全て雨のせいか? 神のせいか…?
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