2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
ボツ、ボツと傘を叩きつける雨。
片手に花束を持つ俺の足も気づけば早足になっていた。
橋を小走りに走る。京助が転落した場所は、自分の足で行くには結構な時間が掛かってしまう。
京助が転落した場所にたどり着くと、俺は重い腰を曲げ、花束を置いた。
何故、正確に転落した場所が分かるかというと、京助が車で突き抜けた手すりの部分が新品に変わっていたからだ。
その手すりは先日までは錆び付いていたという。
これも神の悪戯だ。
俺は傘をずらし、空を見上げた。
灰色の空、その先は何も見えず、冷たい雨は俺の顔に吸い込まれていく。
きっとこの空も泣いているのだ。無情すぎる神を憎み、友と小さな命の損失を悲しみ、そしてその悲しみを表す雫を、流しているのだ。
俺の頬に冷たい水が流れていく、その流れは川と同じくらいに速く、今にも誰かが転落してきそうだ。
しかし俺には、その水が涙なのか、雨なのか、それすら分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!