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「あ、あれぇ?おかしいな、お前押してみろよ‥」
わざとらしく焦る京助、一体どうしたのだろうか。
いや、死人とカフェに座る俺の方がどうしたというんだ。
「お、俺が押すよ‥」
ボタンに手が触れる、その瞬間には、店員を呼ぶ音が鳴り、俺の肩をビクつかせた。
「注文はお決まりでしょうか?」
しばらくすると店員が訪れ、俺が京助に「コーヒーでいいか?」と聞くと、京助では無く店員がその質問に答えた。
「え、はい‥結構ですよ」
「あ、いや‥その」
テンパる俺に、京助は笑って頷いた。
「ああ、じゃあコーヒー2つ‥」
「かしこまりました、お連れの方はいつ頃お着きになられるのでしょう、タイミングを計らってお持ちしますが」
「いえ、すぐにお願いします。あいつ熱いの苦手なんで」
会釈を絶えずしたまま、京助の方を見る。やはり‥店員には京助の姿が見えていない。
なら何故、俺には京助の姿が見えるのだろうか。
「覚えててくれたんだな‥俺が熱いの苦手なこと」
そう言ったのは京助だった。
その言葉は、俺はいなくなったのに良く覚えていたな、という風に聞こえた。
気のせいかもしれないが。
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