雨の日の花束

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それからしばらく会話は無くなり、コーヒーがテーブルの上に置かれるまで、音という音が無かった。 店員はコーヒーを置く時、まずは俺の前に置き、次は京助の前に置いた。 もしかして、店員にも京助の姿が見えたのかと一瞬思ったが、店員は京助では無く、これから来店するだろう俺の連れに向けてコーヒーを渡したのだ。 京助がコーヒーを飲んだ。 カップを持たず、直接コーヒーに口をつけて…その異様な姿は、まるで犬のようだった。 しかし、京助が飲んだコーヒーは一向に減る気配は無い。 そんな京助は、かなり焦っている様子だった。 自分の正体がバレてしまいそうでパニクっているようにも見えた。 「もう、誤魔化せない‥よな、俺‥死んだんだよ」 「いや‥まあ、知ってたけど‥」 何故だろう、京助は死んだはずなのに、いつものように話せてる。 しかも死んだ親友と話しているのに、何故こんなにも違和感が無いのだろう‥ 「え、知ってたの!?なんか流されても奇跡的に生きてる!みたいな」 「いや‥諦めてたよみんな」 「マジで!?ショックだわー…そういや、猫は?」 俺が首を横に振った時、京助は自分が死んだと諦められていたことを知った時よりも、悲しそうな顔をしたような気がした。 「そうか…ああ、俺のコーヒー飲んでな?」 「はあ!?無理だよ2杯なんて!」 「仕方ねぇだろう、俺は飲めねえんだからさ」 「頼む前に言えよ!」 「残したら失礼だろ?」 そう、俺達はいつでもデコボコで、2人合わさるとなんだかんだ楽しいのだ。 その証拠に、今俺はとても楽しい。
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