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それから2人は、思い出の場所を巡った。
小学校の裏庭、ここでは五月ちゃんを取り合ってケンカをした。
中学校の体育館、ここで京助は好きな娘に告白して、ふられていた。
高校のグラウンド、2人は野球部で、部内で俺と京助のチームに別れて勝負して、決着がつかなかったこと。
そんな思い出を巡っていると、いつしか空は暗くなり、雨も強くなって、そして京助が本当に生きているように思えた。
それに、京助に触れることも俺には出来た。京助も俺にだけは触れられるらしく。なんとも不思議なことだった。
でも、何故京助は俺の前に現れたのだろう。
未だにそれは謎のままだった。
その答えは、最悪な形で露わになってしまう。
今日の夜も、あの日と同じで大雨だった。
家に帰るには、あの橋を渡るしか方法は無い。
よって、橋を歩いているといつしかあの場所が見えてくる。
雨に打たれている花束、そのなんとも暗く切ない光景だろうか、特に京助は悲しみに暮れているだろう。
「なあ、健太、俺がお前に会いに来た理由はな…」
突然、京助の声が強張ったような気がした、冷たく、それでいて、身震いしてしまうような声…所々、傘に叩きつけられる雨によって遮られながら、しっかりと、植え付けるかのように、俺の耳にこびりつく。
道路では車が地面を走る音が聞こえている。
「京助?」
俺がそう言っている途中に、何故か俺の体は道路に突き出された。
一体何故、一体誰が俺を突き飛ばしたのか、その時瞬時に分かった。
とっさに京助を見ると、京助は笑っていた。
その京助の姿も、空に舞い上がった傘が落ちて来て、傘に覆われて隠れてしまった。
それが、京助を見た最後の瞬間だった。
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