第七章

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女子生徒の目を見据えて、そう優しく断りを入れる要。 その返事を聞いた瞬間、強ばっていた身体から力が抜けるのが分かった。 …つか、何でホッとしてるんだ? 涙を流しながらも笑顔で『分かった。聞いてくれてありがとう』と言う女子生徒に 『…俺の方こそ、告白してくれてありがとう』と優しく笑いかけ、ハンカチを差し出す要にモヤモヤとしてしまう。 …何で振った奴なんかに優しくしてんだ。こいつ。 『…要君、最後に御願いがあるの』 『何?』 少し、話をした後こんな事を言い出した女にもイライラする。 さっさと帰ればいいものを。 なんて思っていると、衝撃的な事を言い出した。 『最後に…ギュッて抱きしめてくれない?そしたら諦めるから』 …はぁああぁ!?何言ってんだ!この女(アマ)!!さっさと帰れや! つか、そんな事要がする訳ねーだろ。馬鹿なのか。 『…分かった。』 少し困った様に笑いながらも、ゆっくり近付き、言われた通りギュッと抱きしめる要。 王子みたいだよね!とキャキャッ騒ぐ女子を思い出した。 …本当だな。よく見てる。 つか、こんな事をサラッと出来る中学生中々居なくね? モヤモヤとした黒い感情が俺の中を支配していく。 バタバタと走って出て行く女を壁に隠れ睨み付けた後、中の様子を伺う。 既に椅子に腰掛け、窓の外をボーッと見る姿すら絵になるんだな。  頃合いをみて中にはいるが、まだ俺が来た事に気付いてない。 「…要。待ったか?」 「…!直哉。お疲れ様」 俺の声に反応し、振り向いた要の顔は何時もの笑顔で。 さっき告白されたなんて、見てなかったら気付かないだろう。 「…帰るか。」 「うん。そうだね」 何時か、要に彼女が出来たらこんな風に一緒に帰れ無くなるんだろうか。 …コイツが惚れる女ってどんな奴なんだろう。 「…なぁ、俺達は変わんねぇよな」 「ふふっ、何?いきなり」 変わらないよ。って笑う要に安心しながらも…複雑になる。 …こんな感情は知らない。要に向けるものじゃ無い。 そして、その感情に蓋をした。 、
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