第九章

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何でこんな時間にこんな場所に。 …あぁ。昼間みたいに女の人と一緒にいたんだろう。 そう想像しただけで、ヂクヂクと心臓が痛くなり涙が出そうになる。 あぁ やっぱりどうしようもないくらいに…直哉がスキなんだ。 「あの日以来だな」 「……うん」 本当気まずい。 早くこの場から離れたい。 「あ、俺今まで朔達と飲んでてさ」 朔達と…じゃあ女の子と居たわけじゃなかったんだ。 って、何ホッとしてんだか。 「実は、俺さ」 「直哉!」 少し大きな声を出して中断させる。 無理してまで一緒に居なくて良いのに。本当は気まずいんだろ? それに…直哉と居るとアノ光景がチラついてムカムカするんだ。 「俺…もう帰るね。夜遅いし」 まともに顔を見る事もなく、踵を返し離れる。また…逃げ出してしまった。 「っ待て!要!」 腕を引かれたと思ったら、背中に広がる温もり。 首には直哉の腕が巻かれてる。 「頼む…逃げるな」 あまりにも切なそうな声。 冷え切った首筋に直哉の熱い吐息が触れる。 衝動的に首に巻かれた直哉の腕を握りしめた。 悲しくも辛くも嬉しいわけでもない なのに 勝手に涙が溢れそうになった。 、
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