第九章

12/15
前へ
/202ページ
次へ
要-side- 突然の直哉からの告白。 頭の中が真っ白になった。 『お前が好きだ』 『失いたくない』 小さい頃から抱いた感情。それは 叶わない想いだと思っていた。 俺を逃がさないように抱き締める腕を、強く握り締める。 「直哉…」 俺も好きだよ。 と言いそうになって、フラッシュバックしたのは神社のアノ光景。 知らない女と抱き合う直哉。 そうだよ…直哉は女が好きなんだ。当たり前の事を忘れていた。 あの女を抱いた手で抱き締められている。そう思ったら身体が勝手に動き腕を払いのけていた。 「…要?」 初めて直哉を拒絶してしまった。 「…ッ、直哉。冗談は止めてよ。」 真っ直ぐ直哉を見据えて出てくる言葉。 「は?…冗談、だと?」 俺の言葉に歪んでいく顔。 直哉は今混乱しているだけ。 きっと、寂しかったんだろう。 離れ離れになったことが無かった俺達。そして知った俺の気持ち。 「直哉は優しいから色々な感情が入り混じってるんだ。俺の気持ちを聞かされて、連絡を絶たれ、離れた二年間。優しいから…受け入れようとしてくれたんだろ。約束もあったから」 俺達はずっと一緒にいようね。 純粋で穢れを知らないあの頃。 ずっとずっと一緒に居たかった。 「俺は…もう約束を果たせないんだよ。直哉」 違う…本当は一番守りたい約束だったんだよ。 、
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1455人が本棚に入れています
本棚に追加