第十一章

4/10
前へ
/202ページ
次へ
…あぁ。こいつも必死なんだな。 好きな奴に振り向いて欲しくて、でも中々手に入らない。 「あいつは…猫みたいなんだよな」 「…は?」 俯いていた顔をあげ、いきなりなんだ?みたいな顔をする。 「捕まえられると思ったら逃げられて…強そうに見えて脆い。泣き虫だけど、自分一人で何とかしようとする。フラフラと彷徨って捕まえられない」 「あぁ、うん。分かる気がするね。それは」 少し考える素振りをしたあと、眉を下げそう言ってクスリと笑う。 やっぱり要もこいつの事を信頼しているんだか。 じゃないと…あいつは基本笑顔だ。泣き虫なんて分かる訳がない。 「…名前は?」 「え…あぁ。俺は岩崎尚吾」 「知ってるだろうが…俺は中井直哉。俺はお前の事を気に食わないが、要がお前を信頼しているのは分かる。だから、お前は俺の敵だ。絶対負けねぇ」 ビシッと指をさして不敵に微笑めば、一瞬見開かれた目が同じように不敵な笑みを浮かべ 「俺も…君には負けない。絶対にだ。」 互いに戦線布告をすれば、何処かスッキリした。それは尚吾も同じようで さっきまで追い詰められていたような表情が、何処か吹っ切れたように感じる。 …くそ爽やかめ。 少ししか話してないが何となくこいつがどんな奴か分かった気がする。 「…そお言えば、何処で寝泊まりしてるの?今朝は要の部屋に居なかったけど」 要の部屋に居なかったけど?だと? …通ってんのか??要の部屋に! 「おい、どういう意味だ?要の家に毎日行ってんのか」 「あれ…知らなかったの?俺は用事がある時以外ほぼ毎日行ってるけど?まぁ、高校からそんな感じだったし…借りてる家の部屋も隣だよ」 ニヤニヤと意地悪く笑う尚吾の頭を殴りたい衝動にかられるが我慢する。 …半同棲状態じゃねぇか。絶対邪魔してやる。 「家は何処だ」 「教えなぁい。じゃあ俺はバイトあるから先に行くよ。」 ヒラヒラと手を振り去っていく姿に軽く殺意が沸くが、要に聞けば良いことだと思い落ち着かせる。 『はぁ、本当強敵…だな』 2人が同じ言葉を呟いたのは、2人は知らない。 、
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1455人が本棚に入れています
本棚に追加