第十二章

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「要…おい、起きれるか?」 そう言いながら優しく愛おしそうに頬にふれる手。そして直哉の瞳に少しだけ滲む欲情の色を尚吾は見落とさなかった。 「俺抱えるよ」 言うが早いか、要を抱えようとする尚吾に 「…いや、悪い。俺が抱える」 それを制すように、要の鞄を尚吾に渡し要をおんぶして店を後にする直哉。 それをみて少しだけギュッと唇を噛み締めた後、二人のあとを追いかけた。 ーーー… 店を後にし、もう夜だと言うのにまだまだジメジメとする暑い夜道を歩く。 また沈黙が流れるが、先程のBARでのような重いピリピリとした空気ではない。 「…今日は、ありがとうな」 その沈黙を破ったのは直哉だった チラリと自身に向けられる瞳に目を見開く尚吾 「…え?何が?」 「あー、いや、…正直言えば二人で飲みたかったけど、二人きりだったらこの状態になった要に我慢出来る自信無かったから、だから尚吾が居てくれて良かったよ」 困ったように笑いながら、よいしょ、と要を抱え直す直哉。 その光景はあまりにも自然で。二人の離れていた時間なんて関係無い。そう言われているようだった 「…別に、どうってこと、ない…」 ーあぁ、嫌だ。こんな感情抱きたくないのに。ついつい思ってしまう。 要を離して、要に触るな、要を理解出来るのは俺なのに…と どうしようもない焦燥感に駆り立てられるんだ 「…大丈夫か?」 立ち止まる尚吾に気付き、振り向けば俯いており表情は伺えない 「あぁ、てか何処に行こうとしてんの」 「あ?…適当に歩いてたわ。てか要の家どこ?連れて行く」 「ッッ、嫌だね、勝手には教えるか。もう少し行けばコンビニと公園がある。そこで飲みながら要が起きるのを待とう」 「んな、おい!別に送るだけだろ」 フイっと顔を逸らしながら、スタスタと追い越し歩き始める人物の後ろを文句を言いながらついて行く。 ーっとに!こいつとは合わん、家くらい教えてくれても良いだろうに。 少し走れば背中から「んっ」と発せられる声 こいつはこいつで、この馬鹿野郎が。 他の奴らにもこんな姿を見せていたなんて知り、嫉妬心でおかしくなりそうだ。 まぁ…傷付けるつもりはないけど。耳元でスゥスゥと寝息をたてる要の頬に頭をすり寄せる …ようやく見つけたんだ。二度と手放してなるか。覚悟しとけよ。 、
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