第十二章

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「あー、美味い」 買ってきたスルメイカとビールを飲みながら、空を仰ぐ直哉。 …親父かよ。 要はまだ起き上がる気配はなく、隣のベンチに座り2人で飲み直していた。 チラリと様子を伺うと、幾分か赤みが薄れてきているように思うが。 「…」 黙々と柿ピーやスルメイカを食べ、ビールを飲みながら何も言葉を発せられずにいた。 …嫉妬はした。けれど、以前ほど直哉を憎めなくなっているのも事実だ。 それはきっと…直に話して過ごすうちに、嫌な奴じゃないと分かってしまったから。 ギリッとビールの縁を噛み締める。 「……あー、どうかしたか?」 ハッとして声のする方に視線を向ければ少しだけ、緊張したような表情をしていた。 …俺にバレているのか、と心配しているんだろうか。まぁ勘づいてはいるがな 「……」 さて、なんて言うのがベストか 「おい、無視は止めろ。お願いします」 随分と上からの物言いだが下手だな 「別に~、ナニをしてたかなんて俺は知らんよ。だって居なかったから」 まぁ、勘づいてはいるけどな!!! 要はピクリと身体が少し動き もう1人は明らかに表情が引きつったのを俺は見逃さなかった。 「いやぁ~、別になにもしてないけど」 ゴクゴクと一気にビールを飲み干す姿を見て、要同様嘘をつくのがこいつも下手くそだな。 と呆れながらビールで喉を潤す。 …ほんと、憎んだままでいた方がずっと楽だったのにな。 、
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