第三章

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ー8月10日 「うしっ!行くか」 結構な量になった鞄を持ち上げ、寮を出り、呼んでいたタクシーに乗り込み駅に向かう。 もう結構見慣れた街並みを眺めながら、昨夜の電話の事を思い出していた。 「…祭…か。」 「やっぱ、もう地元の奴等と約束しちまったよな?」 「あ…いや。…まぁ誘われたって言うか…まだ、返事はしてないって…言うか…あーうん。」 何とも、歯切れの悪い返答に尚吾はピンと来た。 要がこんなに、悩んだりする時は必ず直哉君が関係している。 …誘われたけど、まだ会いたくないんだ。 会いたい癖に、親友としての仲を壊したくなくて…離れてもずっと思い続けている。 思うたびに【あの時】と同じ顔をするくせに。尚吾の心の中で、チリチリとする感情が芽生える。 「…分かった。じゃあ明日、また連絡するな。考えてて」 「あ、あぁ。分かった!…尚吾」 どことなく、様子がオカシイ尚吾の名前を要は無意識に呼んだ。 「どうした??」 「えっ!あ、いや。明日気を付けて遊びに来いよ!」 「…ハハッ!分かった。要も気を付けて帰るように。」 「あぁ。…じゃあな」 -------------- …はぁ。窓に頬杖を付いたままため息が 漏れる。結局どっちと遊びに行くか決めきれなかった。 直哉とは会いたくない。でも…会いたい。矛盾しまくりの俺。 久しぶりに、彼奴の笑った顔も見たい。楽しく話し合いたい。 …でもきっとそれは無理だ。 直哉の、笑う顔を見れば、抱き締めたくなる。話し合えば、感情が溢れ出してしまう。 、
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