第四章

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目の前には心配そうな顔をした直哉が覗き込むように俺を見ている。 そして何故か自分の呼吸が荒くなって居るのが分かる。 「…何で直哉が?」 見上げたまま、直哉に訪ねると困ったように笑いながら俺の目元を指で優しく拭う。 拭われて涙が溢れている事に気づき、慌てて涙を拭う。 「寝ぼけてんのか?今お前帰省中で、昼飯出来たから呼びに来たら寝てて魘されてたんだ。」 あぁ。そっか…疲れてて俺うたた寝しちゃってたのか。 服が汗でジットリとしていて気持ち悪い。 「…悪い。起きるよ」 何だってあんな夢みたんだ。 直哉の顔が上手くみれない。 起き上がろうとしたら 「…要…」 ギシッとスプリングが軋む音がして、また目の前には要の顔が。 さっきと違うのは、直哉にまるで押し倒されてるように、みえるこの体勢。 「…ッッ!退けよ。起きれん」 「こうでもしないと、お前逃げ出すだろ?だから逃げないように。話したい事がある」 不適に微笑む直哉に、自分の顔に熱が籠もっていくのが分かる。 あり得ない!あり得ない!あり得ない!なんだこの状況!? 「ちょっ、何の話だよ!」 「誤魔化すな。…お前には聞きたい事が山ほどあるんだ!」 …ッッ!駄目だ。この目から逃れられない。綺麗な漆黒の瞳。 逃げられない。テンパって冷静な判断が出来ない。 誰か… ヤバい…泣きそうだ。 「…ッッ!要…何で…」 首もとに顔を埋められ、心臓が壊れんじゃねーかって位にバクバクして、ついに涙が溢れた。 「頼む…何で俺を避ける…?何か気に障る事したか?教えてくれ……お前に避けられると…辛い。」 …直哉…直哉…直哉… 違う。ただ好きなんだ。誰よりも何よりもお前が好きで…好き過ぎて…どうにかなりそうで… 「…ごめん」 そう言って直哉のサラサラとした髪をなでる。俺のせいで…こんなに悩んでたなんて。知らなかった。 「ごめん…直哉」 好きになってごめん。 いつか必ず昔みたいに普通に幼なじみとして、接するから。 …今はまだ謝る事しか出来なかった。
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