第五章

14/15
前へ
/202ページ
次へ
「じゃあ、デート楽しんでね。行こう。」 グイっと腕を引かれ歩き始める尚吾。 後ろからは、直哉の声がするが強く握られた手からは逃れる術が無い。それに、何時もと雰囲気が違うから戸惑ってしまう。 何も言葉を交わさないまま付いた場所は 境内の奥にある、立ち入り禁止の場所の林を抜けると町を見おろせる丘。此処は昔直哉と来た事のある場所。 尚吾良く知ってたな。 …尚吾の顔を伺うが、何を考えているのか分からない。 取り敢えず草むらに腰を下ろし、尚吾の切れている原因を聞きたいが緊張してしまう。あんなみっともない処を見られたんだ。そう思っても仕方ない!! あ…でもお礼くらいわ言っとかないとな。 「…しょ、尚吾!!!」 「!!!!え、はい!!」 バッと尚吾に向かい直し声を掛けると、俺以上にワタワタと慌てた様子で顔を上げ目が合う。 …尚吾の顔を久々に見たな。 もう、何時もの雰囲気に戻ったみたい?? 「…ありがとうな。本当助かった。ハハッ!俺本当尚吾に助けられてるよな。男なのに情けないよな…ゴメンな?」 微笑顔を浮かべお礼と謝罪をする。本当何時見離されてもオカシクないよな。離れられたら…寂しな。 「…馬鹿だな。謝る事なんて無いだろ。」 俯いている俺の頭を優しく撫でる尚吾。 「…それに謝るなら俺の方だろ?要が好きな相手にあんな事言ってゴメンな?泣きそうな要みたらさ…我慢出来なかった。」 「そんな事ない!!あれは…全部俺の勝手な感情のせいだから。もっとコントロール出来る様になるから!お前に頼らなくて良いように…」 だんだん小さくなっていく声。 俯いているから尚吾の顔はみえない。あんな事になって直哉不審に思っただろうな。…諦め本当悪すぎだな。 早く諦めないと。 幼馴染ですら居られなくなる。 「…要」 そう言って、俺の頬を包み込んで顔を上げさせられた先に見えたのは、尚吾の悲しそうな顔。 「俺は、気にしない!迷惑だなんて思ったら優しくなんてしないし、助けたりしないよ。もっと頼ってよ。」 「尚吾は優しいから…ッッ!!??」 息が掛かる程近くにある尚吾の顔。目を逸らしながら訴えていると尚吾の顔がさらに近くなった。 気付いたら口元に何かが触れている。 、
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1455人が本棚に入れています
本棚に追加