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大きな手でワシャワシャと少し乱暴に拭く。
それが心地よく前を向いたままアイツの嬉しそな口元を見つめる。
「ちゃんと前向いてや~」
「‥前向いてるけど‥」
「えっ!後ろ向きなンとちゃうん?」
「コッチ前ですから!」
「アハハ~黒~て前か後ろか解らへんやン」
アイツは大袈裟に笑いながら少し屈むと
…チュッ…
「へっ?」
一瞬で何があったか理解出来ない‥
少し照れたアイツが
「ホンマや‥エロい唇があるわ‥‥」
そう言ってもう一度顔が近くなる。
パァンッー!
両手で頬っぺたを挟み思い切り変顔にしてやった。
「アハハ~めっちゃブサイクーー!」
口を尖らさせたまま
「にゃにふんの~」
「お前に2回目はない!」
そう言って手を離すと
「俺からは、1日1回なン?」
目を丸くして訊くので、思わず
「そやね~」と言ってしまった。
文句を言いたげにブツブツと腕組みをしていたが、急にコッチを振り返って
「じゃぁ明日昼からどっか行かへん?」
「ナンでやねん!」
ニヤッとして
「じゃぁ~明日の分‥今してもええ?」
「アカンわーー!」
じゃぁ明日、アカン、じゃぁ今、アカン、‥を繰り返す。
アイツは目を細めて低く唸ると
「かまへん!明日O寺駅前1時やから!」
「はぁ~?行かへんよ」
「ずっと待っるから、けぇへんかったら‥
泣くからな!」
「ナンやねんそれっ!オカマやン」
二人並んで座ってアホなやり取りするのが楽しくて、雨が止んだのに気付かなかった。
終り。
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