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静かに桜を眺めてると、今度はアイツが‥
「さまざまな こと思い出す 桜かな‥‥」
「ウーン、それも芭蕉ですやン。」
「ハハハ、よくご存じで。」と、ニカッと笑う。
‥一体何を思い出してンやろ?俺やったら、
「せやっ、上京した時に本の企画で一緒に桜の下で写真撮ったなぁ…」
「せやなぁ、あん時は桜を愛でる余裕も無かったなぁ…」
「アハハ、思い出した。散歩の写真。‥電柱の住所が《黒本町》になっとった。ハハハ。流石やね、黒本さん。」
「井本です!って、えっ?嘘やン‥マジで。俺知らんかった。最悪!」
‥アハハ、ホンマにあの頃から何年経ったんやろ?忘れてしもた‥俺は18年間、人生の半分以上お前に恋して過ごして来たんや‥‥
ンッウフフ‥‥思わず笑みが溢れる。
「キッショ。オカマやン、その笑い。」
そう言って、目を細め俺を見る。
目を細めたアイツを見ると、俺の事をいとおしそうに見つめてくれてる様で、いつも勘違いしてしまう。
だから、つい
「俺、お前のその目を細めた顔好っきやわ‥」と、ゆうてしもた。
そんな言葉に少しも動じもせず、
「せやろ、格好ええやろ?」と、一層目を細めた。
‥ちゃうねん、優し過ぎんねん、その目は‥
そう思いながらも、動じなかったのが哀しくて
「ホンマやな、俺お前やったら抱かれてもええ‥‥」
ゆうてしもた‥‥‥
俺の言葉にピクッと反応したアイツをみて
‥‥しまった!冗談が過ぎた、とゆうより、本音が出てしもた‥
「そっか‥じゃぁ、もっちょっと傍に寄ってみよか?」
俺との距離を詰めて膝に手を置く。
‥えっ、ちょ、‥何で?からこうてんの?‥
顔がビールのせいじゃなく、紅くなっていくのがわかる。
所在がなく、手に持ったビールを煽る。
それを指さし、
「空やン‥さっき飲み干したやろ。」そう言って、自分のビールを口に含み‥‥俺に
「‥ウンッグゥッンッ‥‥ハンッ、‥ンッ‥」
「‥旨いか?‥‥」
優しく目を細める。
「‥ぉん‥‥」
見つめられて、視線が逸らせない。
「誘たンはお前やで‥‥」
耳元で囁かれ身体が奮える。
それから‥‥
「‥俺、ずっと好きやった。」小さく呟く。
フッと笑われて、
「過去形か?‥俺は藤原の事、好きやで‥‥これからも、なっ。」
吸い寄せられるように、今度は俺から口元に‥‥
「‥ぉん‥これからも、好きや」
おわり。
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