ICレコーダー

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「ウッワァー!最ッ悪!こんな天候に飛行機かょ‥」 窓の外はまだ天気がいいのだが、この後前線が通過するらしい。 そんな時は、思いの外、飛行機が揺れる。 番組の収録が終わって自分一人のロケの為に、仕度をしながら毒づく。 そんな俺を横目に、何やら鞄の中をガサゴソして小さなものを手渡す。 「ええもん貸したるわ。」 「何なん?」 会議の時やインタビューの時によく見掛けるICレコーダー。 「‥飛行機が墜ちるときの最期の言葉いれるんか?‥‥縁起でもない。」 「アホか!ちゃうわ。ネガティブに考えすぎじゃ!」 ‥‥使い方分かるか?と、不思議そな顔をしている俺に向かって、説明をし出す。 「iPod持ってるからええで。‥」 「あぁそやな、音楽聴くんやったらそっちつこたらええ。」 言いながらも画面を表示して 「こっちが行きの分で、こっちが帰りの分や。まっ、帰りは特に聞かんでもええけどな、‥‥」 「やから、一体何やねんな。」 少し苛立った俺にニカッと笑って、 「飛行機が揺れたら聴くんやで。‥大丈夫やから。まっ、邪魔にならん大きさやから使ってや。」 何度も繰り返し、揺れたら聴くんやで。‥と繰り返すものだから、 「ぉん‥‥わかった。」としか言えなかった。 返事をすると笑って、 「大丈夫やから‥気ィ付けて行ってこい。」と、肩を叩く。 ‥俺、こんなんよりたかちゃんのチュウがええなぁ~。 黙って突っ立ってると、 「早ょ行かな間に合わんで。」と、急かされてしまった。
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