71人が本棚に入れています
本棚に追加
「ウッワァー!最ッ悪!こんな天候に飛行機かょ‥」
窓の外はまだ天気がいいのだが、この後前線が通過するらしい。
そんな時は、思いの外、飛行機が揺れる。
番組の収録が終わって自分一人のロケの為に、仕度をしながら毒づく。
そんな俺を横目に、何やら鞄の中をガサゴソして小さなものを手渡す。
「ええもん貸したるわ。」
「何なん?」
会議の時やインタビューの時によく見掛けるICレコーダー。
「‥飛行機が墜ちるときの最期の言葉いれるんか?‥‥縁起でもない。」
「アホか!ちゃうわ。ネガティブに考えすぎじゃ!」
‥‥使い方分かるか?と、不思議そな顔をしている俺に向かって、説明をし出す。
「iPod持ってるからええで。‥」
「あぁそやな、音楽聴くんやったらそっちつこたらええ。」
言いながらも画面を表示して
「こっちが行きの分で、こっちが帰りの分や。まっ、帰りは特に聞かんでもええけどな、‥‥」
「やから、一体何やねんな。」
少し苛立った俺にニカッと笑って、
「飛行機が揺れたら聴くんやで。‥大丈夫やから。まっ、邪魔にならん大きさやから使ってや。」
何度も繰り返し、揺れたら聴くんやで。‥と繰り返すものだから、
「ぉん‥‥わかった。」としか言えなかった。
返事をすると笑って、
「大丈夫やから‥気ィ付けて行ってこい。」と、肩を叩く。
‥俺、こんなんよりたかちゃんのチュウがええなぁ~。
黙って突っ立ってると、
「早ょ行かな間に合わんで。」と、急かされてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!