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「藤ッ‥藤原さん!助けてください。」
ロビーでコーヒーを飲んでいると後輩が慌てふためき飛んできた。
「なんやねん。‥‥」
不機嫌極まりない声で答える。
今、すこぶる機嫌が悪い。折角の井本と過ごす三連休。‥
当の本人がなかなかやってこない。
「あのッ‥楽屋で井本さんが暴れてます。」
「はぁー?いつもの事やろ‥まだ、楽屋で遊んでんかいな‥‥」
「ちゃいますって!暴れてはるんです。」
苦笑いしながら
「別に刃物もってへんのやろ?」
「恐いこと言わんといてください‥‥」
俺は、弄っていた携帯を閉じて、空になった紙コップをゴミ箱に投げ捨てる。
「藤原さん、マジでヤバイんですって‥‥」
顔面蒼白の後輩をみて
‥まっ、洒落にならんわな。と思う。
今日の楽屋のメンバーは俺らの関係を知っている。おそらく、井本は茶化されたんやろ。
全く、やから早ょ帰ろってゆうたのに‥‥アホやなぁ。
ガシャン‥ガタッ!
「どの口やぁー!二度と開かんようにしたるー!」
おぅおぉ~、廊下まで響いてからに。
何を仕出かしたんや?
ガラッ!
「井本、どないしたんや?」
後輩二人に羽交い締めされた井本が顔を真っ赤にして暴れてる。
「藤原ー!アイツが悪いねん!」
井本に近付き、腕を掴み横並びに椅子に座らせる。
「‥ン?何を握ってンねん。出してみ。」
右手からチューブの様なものを取り上げ、そのまま手を繋ぐ。
「やってや、アイツが‥‥悪いねんて。」
「ン‥わかっとるょ。お前は悪ないから‥‥」
皆に見せつけるように、井本の髪を梳き繋いだ右手の甲に口づける。
周りからは、また始まったとばかりの照れた雰囲気が流れる。
俺は気にせずそのまま手を離して井本の肩を抱き寄せようとした。
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