瞬間接着剤

7/14
前へ
/384ページ
次へ
ガチャ! 「あの、買ってきました。これ、お釣りとレシートです‥‥」 運転席から声をかけるが、明らかに兄さん達の、お前空気読めや!的なオーラが怖い。 けど、ちょっとの間ぐらい我慢してください‥‥ッて言えませんが‥‥ 「‥すまんな。」井本さんの肩越しから藤原さんが短く返事をする。 後ろ向きに膝に座っている井本さんの表情は見えないが耳が赤い色してるのに気づき、お釣りとレシートをそのままにして車をだした。 ‥なんか、マフィアと娼婦みたいですやん‥‥ 時おり、エンジン音に紛れて甘い声が聞こえてくる。 ‥あきませんッて、俺、運転に集中できません。 バックミラーで後ろを見ることも出来ず、クスクス、笑う声や吐息で一杯の車をなんとか運転し自宅まで送り届ける。 一応兄さん達は手が塞がっているので、俺が荷物を持って部屋まで運ぶ。玄関でおいとましようとしたが、余りに荷物が多いため、 「あの‥冷蔵庫に入れときましょうか?」と、尋ねてから中に運びいれた。 「すまんな‥助かるで。」機嫌の良くなった藤原さんは笑ってはったが、井本さんは俺が通るたびに蹴りをいれてきた。 その度に 「すいません。」としかゆえなかった。 粗方片付けて兄さん達にもう一度きっちりと謝る。 「本当にすいませんでした。‥‥それと、今晩は片手でも簡単に食べれるようにお寿司買ってありますから‥‥」 そう言って先程のお釣りとレシートを渡す。 やっと井本さんが笑ってくれはって、 「あんまり皆に乗せられたらアカンで。‥それと俺の事をゆうんはかまへん。藤原の事はもう絶対にゆうなや。ええな。‥‥」 「はい!」 藤原さんの方に向き直し頭を下げる。 「‥大丈夫やって、俺気にしてへんし、なっ、‥ホンマにここまで運んでくれて助かったで‥」
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加