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握ってそのままやと我慢がでけへんらしく、自分で動き始める。
咥えた指を離しても指はそのままにして、うわ言のように俺の名前を呼ぶ。
そして‥‥
「‥い、や‥やから‥‥俺、‥ちゃう‥まだ‥ァ‥」
いつもと様子が違う。涙目で訴えてくるから、仕方なく手を離す。
肩で息をしながら、抱き締めてや‥お願いやから‥と、何度も呟く。
「んっ、‥これでええンか?」
「‥ンッ‥‥」
キツいくらい抱き締めると泣き出した。やっぱり、いつもと様子が違う。
「どしたん?何で泣くン?‥‥ホンマに嫌なん?‥俺、の事‥‥」
今度は、俺が不安になり声が震える。
腕の中で黙って首を横に振る。
「じゃ、何でなん‥‥泣かんとってやぁ。‥」
「ぁ、あのな。‥よぉ、わからん。‥」
顔を上げずに答える。
「ゆっくりでええから、‥ゆうてみ。」髪に口づけて優しく語りかけてみる。
「‥腹、たつねん。‥」
「‥?腹たったら泣くんか?」
「ちゃう‥ギュッてして欲しいねん。‥」
「‥こうか。」
「‥優しいねん。‥アカンねん。‥悪いねん。‥嬉しいねん。‥‥
やから‥また、腹たつねん。‥‥」
そう言ってまた、声を殺して泣き出した。
背中を擦りながら、大丈夫やから‥と、繰り返し囁く。
‥虐め過ぎたんやろか?
情緒不安定になってンか?
「‥井本?全然わからへんから、訊いてもええか?」
「ぉん‥‥」
「 何に腹たつねん。‥」
「‥俺‥‥」
「優しい、アカン、悪い、嬉しい、ッて何なん?」
顔を上げて俺の頬に手をやる。
「優しいのは、お前。‥アカンのは、優しくしたら。‥悪いのは、俺。‥嬉しいのは、‥‥手が繋がったままやから。
‥やから、そんな風に思てる自分に、
‥こんな状況で、感じてしまう自分に‥‥
‥悦んでしまう自分に‥腹たつねん‥‥」
恥ずかしそに手を離し顔を背ける。
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