一人暮らし‥‥2

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夢を見ていた。 子供の頃、一人で熱を出して留守番してた。 布団を被り時計の針の音だけが聞こえて 世界中に自分一人だけとりのこされて 誰からも必要とされてない気がした。 不安にかられた直後‥‥ 自分の周りの空気が薄くなる。 いくら呼吸をしても酸素が入ってこない‥‥ 喘息‥‥ 喉が嫌な音をたてて、助けを呼ぶ声さえ出ない。 息苦しい‥‥唇が乾く‥‥喉が鳴る。 このまま治まらなかったら? イヤや!誰か、助けてや‥‥ ピンポーン‥ピンポーン‥‥ 遠くで鳴ってる気がする‥‥ 誰か帰ってきた。 薄く目を開けてみる。‥ ‥誰なん? 額に手を置き、身体を楽な体勢に落ち着かせてくれてる。 もう一度重たい瞼を開けてみる。 心配そな顔が覗き込んでゆっくりと口を開く。 「鍵開いてたで‥‥」 「ン‥ヒュゥ、ヒュゥ、‥井、本?」 名前を呼ぶとニカッと微笑み、汗で引っ付いた髪を梳く。 「ン、名前覚えてくれたンや。‥喘息なんか?薬は何処なん。」 「食器、ヒュゥ‥棚の中に‥‥ゼィゼィ‥あ‥」 「わかった。待っていや。」 キッチンでバタバタと音が聞こえる。 「どっちなん?吸入か?錠剤か?」 「吸入‥‥」 俺の身体の後ろからソッと抱き抱えるように起こして、手に渡してくれる。 「大丈夫なん?‥救急車呼ぼか?」 「シュッ‥‥イヤや‥はぁッ、ヒュゥ‥‥お、さまる‥から」 「ン‥喋んな、もうええ。‥‥この体勢楽か?」 黙って頷くと、ちゃんと座り直して優しく抱き締めてくれる。 苦手な他人の腕の中で何故か安心した。 心配そな顔で俺を見つめ時折、背中を擦り手を握ってくれる。
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